持續了千年歲月的和平時代已成昨日雲煙,這是被後代歷史學家稱做「黃昏時代」的揭幕期‧‧‧



【通りがかり男】
お前、○○って言うんだろ?
サディーヤさんが呼んでたぜ。
絶対に1人で来てくれってよ。


【毒術師サディーヤ】
○○さん・・・
少しお話が・・・

【毒術師サディーヤ】
○○さんは
オルフェウスさんと
仲がよかったですよね。


・はい、彼とは・・・
・いえ、特に・・・



・はい、彼とは・・・

【毒術師サディーヤ】
この小さなガラス玉が、
彼の楽器の中から・・・

人の臓腑を食い破る
おぞましい虫・・・
この中にあるのはその虫の卵です。

花粉よりも小さな卵ですが、
人間の体内にはいると
数時間で孵化し、

孵化より3日程度で成虫となり、
人間の内蔵を食べ始めます。(原文のまま)

人間にしか寄生しない悪魔の虫。
様々な毒を扱う私たちセディク族でも
この虫は忌み嫌われています。

1番の恐ろしさは
その繁殖力と抵抗力。
体内で孵化したこの虫を
殺す方法はありません。

ひと月も経たずに宿主は死に、
その排出物や死体などから、
卵は近くの人間に広がっていきます。

糸くず程度の大きさの
この虫によって、
バイレステでは5万人の町が
全滅したことがあります。

これは暗殺者の使う毒ではありません。
町そのものを壊滅させるための
死神の鎌・・・

どうして彼がこのようなものを・・・

【オルフェウス】
困るなあ。
勝手に持って行くなんて・・・
それ探してたんですよ。

【毒術師サディーヤ】
オルフェウスさん・・・
答えて下さい。これは・・・

【オルフェウス】
察しの通り、カンタレッラ・・・
人を喰らう虫です。

【毒術師サディーヤ】
何のためにこのような
危険な卵を持ち込んだのですか?

【オルフェウス】
いやだなあ、
決まってるじゃないですか。
人を殺すためですよ。

【毒術師サディーヤ】
このような閉ざされた町であれば
あなたも死ぬことになります。
覚悟の上なのですか?

【オルフェウス】
ええ、もちろん。

軽蔑しました?
仕方ありませんね。
もう友達ごっこは止めにしましょう。

いい機会です。
もう少しで本当に君に惚れちゃう
ところでしたから。

【毒術師サディーヤ】
本当のことを話して下さい。
あなたは何のために・・・

【オルフェウス】
美人の頼みは断りたくないのですが、
それはイヤです。

【毒術師サディーヤ】
あなたの切り札は私の手にあります。
もう隠す必要もないのでは?

【オルフェウス】
そうでしょうか。


【毒術師サディーヤ】
!!!

【オルフェウス】
2つ用意してたんです。

ぼくの勝ちですね。
これを床に叩き付ければ
この町は死の町になります。

【毒術師サディーヤ】
あなたは・・・

【オルフェウス】
冗談です。
いいでしょう、理由を言います。

ご想像通り、
これでこの町の人間を皆殺しに
するつもりだったんです。

いくら練達の戦士でも、体の中から
虫に食べられればひとたまりもない。

もちろん、体内の虫を駆除する方法が
治癒の術やセディクの術にないことも
調べがついてます。

【毒術師サディーヤ】
何のために?
恨み・・・ではないですね。

【オルフェウス】
ええ、この町の人達に
恨みなんてないですよ。

禍根を取り除くためだけです。
『アザレの石』が見つからないよう。

【毒術師サディーヤ】
アザレの石・・・

【オルフェウス】
まず自己紹介をしましょう。

ぼくはイレニア島の北部、
バイレステの植民地に生まれた
イレニア人です。

父は、そこでそれなりに
大きな商館を経営していた
商人でした。

ですが、あの島にいる
バイレステ人の商人にしてみれば、
普段見下しているイレニア人が
成功しているのは面白くない・・・

ある日、イレニア総督府の役人が
父を逮捕しにきました。
罪状は覚えていません。
どうせ彼らのでっちあげですから。

ともかく、ぼくの父と母、
そして兄と兄の婚約者が
処刑されました。

4つの死体は、町の広場に
2ヶ月間も吊されたそうです。
そう、イレニア人への
見せしめのために・・・

ぼくはバイレステ本国に労働力として
送られることになりました。
幸運なことに、船をおそった
嵐によって助かりましたが。

イレニアの海岸に流れ着いたぼくは、
その後、北イレニアの
独立運動の組織に加わりました。
それが10歳の時のこと。

といっても、はじめの内は
国の独立なんてどうでもよかった。
ただバイレステ人に復讐する力が
ほしかっただけ・・・

11歳で初めて人を殺しました。
相手はバイレステ人の貴族。
以降、貴族や大商人を
百人は殺してきました。

ですが15歳の時にふと思いました。

いくら殺してもきりがない・・・
奴等は次々と本国から
新しい役人を送り込んでくる、
ぼくのしていることは無駄なのかと。

丁度その時、都合よく
バイレステ本国での仕事を
任されました。

バイレステの元首の家に侵入し、
政府の動向を探るという仕事です。
それにはぼくが適任だったんです。

【毒術師サディーヤ】
・・・?

【オルフェウス】
王様気取りのあの元首の家には、
噂通り美形の小姓が
50人もいました。

元首の趣味とその妻の趣味が
全く同じというから笑える話です。
その中に紛れ込むのは
比較的簡単でした。

【毒術師サディーヤ】
でも、イレニア人は
私のような褐色の肌に
黒髪のはず・・・

【オルフェウス】
髪は染めました。
この肌はリウナエルで
抜いたんですよ。

バイレステの貴族の女どもは
白い肌の男が好きですから。
第一、黒い肌に黒髪じゃ
イレニア人ってすぐにばれてしまう。

奴らにとってイレニア人は
支配する対象でしかないですからね。
だから、肌の色と髪の色を
変えたんです。

【毒術師サディーヤ】
知らないのですか?
リウナエルは劇毒です。

そんなもので全身を焼けば
あなたの命は・・・

【オルフェウス】
ええ、
4,5年で死んじゃうらしいですね。
でも死ぬのは怖くない。

【毒術師サディーヤ】
そんな・・・

【オルフェウス】
話を本題に戻しましょう。

元首の執務室に忍び込み
わかったこと・・・
これは意外な事実でした。

バイレステ共和国の内情は
ぼくが想像していたよりも
惨憺たるものだった。

貴族は堕落し、
各属領の民衆の不満も爆発寸前、
財政は逼迫し、各機関も
正常に機能せず・・・

自分達は強大なドうゴン相手に
勝ち目のない戦いを続けていた
つもりだったのに、

実は、そのドラゴンは、
こちらが何も何を下さなくても
年老いて今にも死にそうだった・・・

それがわかったのです。
一気に体の力が抜けました。
そう、自分の存在価値を疑うほど。

ですが、彼らが永遠の命を得れば
話は変わってきます。

彼らの支配は永遠のものとなり、
逆にぼく達は永遠に支配され、
虐げられ続ける・・・

アザレの石が見つかった瞬間に
ぼくはこの町を消すつもりです。
そのためにぼくはこの町に来ました。

【毒術師サディーヤ】
あなたが普段
いい加減な男を装ってるのは
皆を油断させるため?

【オルフェウス】
いいえ、
本当の自分を守るためですよ。

演技した自分が人を殺したのなら、
罪悪感など感じずに済む。

人を殺したのは本当のぼくじゃない、
ぼくは殺人者の役を演じただけだ、
そう自分に言い聞かせる事が出来る。

オルフェウスは楽団にいた時に
使った名前です。
地下組織内での呼び名はチェザーレ、
バイレステ元首の公邸ではリア・・・

本名は忘れてしまいました。
嘘まみれの人生・・・
守るべき本当の自分なんて
もう何処にも残っちゃいないのに。

【毒術師サディーヤ】
どうして・・・
どうして話す気になったのですか?

【オルフェウス】
サディーヤさん・・・
あなたは『アザレの石』の発見を
望んでいない。

そして○○さん・・・
君を殺す前に、
一言伝えたかったのかもしれない。

【毒術師サディーヤ】
ありがとう・・・
話してくれて。

これはお返しします。

【オルフェウス】
・・・?

いいんですか?

【毒術師サディーヤ】
あなたは○○を殺さない。

【オルフェウス】
わかりませんよ。
ぼくは期待に答えるのが
得意じゃありませんから。

【毒術師サディーヤ】
○○さん、
彼を支えてあげて下さい。


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・いえ、特に・・・

【毒術師サディーヤ】
そうですか・・・
いえ、ならいいのです。


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