【エレアノール】 ○○、少し用事があるので オイゲンさんの所に 行ってまいります。▼ |
【オイゲン】 本当にいいかい?▼ 【エレアノール】 いつもお手数をかけます・・・▼ 【オイゲン】 いやいや、俺は全然手間じゃねえよ。 だが、外の状況がこうなっちゃあ この金も無事につくか・・・▼ 【エレアノール】 ええ。でも、たとえ1ガルトでも 飢えに苦しむ人々に届けば・・・▼ 【オイゲン】 まあ確かに、何もしないよりは 全然マシだろうが・・・▼ まったく、お前さんのような 賞金首は初めてだぜ。▼ だがよ、お前さんが 何をしでかしたのかは知らねえが、 もうちょっと自分のこと考えても バチはあたらねえと思うがな。▼ お前さん見てるとは、 どこか痛々しいんだよ。▼ ん、お前・・・▼ 【エレアノール】 ○○・・・▼ 【オイゲン】 すまねえ、取り込み中だ。 またにして・・・▼ 【エレアノール】 いえ・・・ ○○・・・話があります。 こちらに来て私の話を聞いて下さい。▼ いつか話そうと思っていました。 オイゲンさんも聞いて下さい・・・▼ 【エレアノール】 私は、ラコース王国南西部の ミバル地方を治める領主の家に 生まれました。▼ 治める領地は狭いものの、 領内に豊かな鉱山を有することから 近年は国王に匹敵する財力を 持つまでに至った地方領主。▼ 父はその財力を背景に、 王国の内務大臣の地位に 就いていました。▼ 【オイゲン】 内務大臣ってことは、 国王の次か、その次くらいに 偉いわけだな・・・▼ 【エレアノール】 15歳の時、父は私を国王の 親衛騎士団に入れました。▼ ラコースの上級貴族の子弟は 成人するまで、王直属の 親衛騎士団に在籍するのが 慣習となっていたためです。▼ 有力諸侯の子弟のみで 編成された最低の騎士団・・・▼ 騎士団とは名ばかりで、 その大半が馬も剣も槍も扱えず、 ただ毎日酒を飲み騒ぐだけ・・・▼ その騎士団に入団して2年目に、 王国の北部で大規模な農民の反乱が 起こりました。▼ 若い貴族達は、自分達の騎士団を 鎮圧軍に加えるよう 国王に頼みました。▼ 宮廷の娯楽に飽きた彼等にとって 農民軍鎮圧も彼等の退屈を紛らわせる 娯楽でしかなかったのです。▼ 彼等は、狩りを楽しむかのように 無抵抗な農民達を弓で射殺し、 無関係な村を焼き払い進軍しました。▼ 飢えと寒さで、もう彼等には 抵抗する力などなかったのに・・・▼ 鎮圧軍が農民軍を包囲し、 そのせん滅も間近に迫った時、 私は、農民達に密かに使いを出し 彼等の脱出の手助けをしました。▼ 内政を司る大臣の娘として、 農民達の困窮をあまりにも 知らなさすぎた責任、▼ 貴族という身分に属する人間としての 最低限の償いのつもりでした。▼ 王都に戻った私は誓いを立てました。 もう2度とあんな悲劇は おこさせないと・・・▼ しかし、その誓いの言葉も虚しいほど 私は余りにも無力。▼ また、貴族達は、民を支配し 搾取することを当然と考え、▼ 自分達には生まれつきその資格が あると、自分達が特別な人間、 選ばれた人間であると信じて疑わない。▼ 彼等にとっては、 飢えに苦しむ数万の農民達より▼ 毎夜催される華美を極めた 舞踏会の方が重要であるという、 恥ずべき事実・・・▼ 悩んだ末、私は、民の暮らしが 少しでも楽になるよう、 父や兄の執務室に忍び込み、 政治書類に細工することを 決意しました。▼ 不作に悩む地方の税を軽減させ、 建設予定の離宮の規模を縮小し・・・ もちろん、根本的な解決には 程遠いことは分かっていました。▼ ただ、私に出来ることは それくらいしかなかった・・・▼ 【オイゲン】 い、いや、 それだけでも十分だと思うぜ。▼ お前らしいというか、 なんというか・・・▼ で、それが見つかっちまったのか?▼ 【エレアノール】 いえ・・・ 私が追われる身となった理由・・・▼ それは、私が助けた農民軍の 指導者の1人が、金のために 密告したのが原因でした・・・▼ 【オイゲン】 え!?▼ 【エレアノール】 私は追われる身となりました。▼ 父や兄までもが、身内の罪を 政敵に利用されるのを恐れ、 誰よりも率先して私の命を狙う・・・▼ 私は孤独と絶望と戦いながら、 あてもなく逃げ続けました・・・▼ 【オイゲン】 やるせねえな、助けた相手に 裏切られるなんて・・・▼ 【エレアノール】 半月後、私はある小さな山に、 追いつめられていました。▼ その山は、 父と兄の率いる5百人の軍勢と、 賞金に釣られた数百人の 男達に包囲されていました。▼ そして、兵力の集中していない 地点を捜しながら、 山中を逃げ回っていた時、 偶然、父に・・・▼ 【オイゲン】 ・・・・・・▼ 【エレアノール】 父は数十人の護衛と共にいました。▼ 娘を案じる親の姿はそこにはなく、 ただ蔑んだ慈悲の笑みを見せて、 兵に私を殺すよう命令を下しました。▼ 私は・・・▼ 今でも忘れることが出来ない・・・▼ 手を滴り落ちる血の生ぬるさ、 息絶える寸前の苦痛にゆがむ顔と、 今にも飛び出しそうなほど 見開かれた両眼、▼ そしてその奥に、 私への怒りと憎しみと哀願が・・・▼ 私の目の前には 父の骸が横たわっていました・・・▼ 【オイゲン】 そこで、この町に 逃げてきたって訳か・・・▼ 【エレアノール】 はい・・・▼ 【オイゲン】 でも、酷い言い方かもしれんが、 悩み続けるのもどうかと思うぜ。▼ たとえ、自分の手で 実の父を殺したにせよ、な・・・▼ 大勢の人を助けよとした お前には何の罪もねえ。▼ お前さんには同情するが、 お前の親父さんには これっぼっちも同情しねえよ。▼ それに、そんなことがあったら クサっちまうのが普通なのに、 健気にもまだ人助けをしてる。▼ 殺さなければ殺されていたんだろ?▼ もちろん、死んだのが お前さんの方だったのなら 悩まなくて済んだのかもしれねえが、 今、お前は生きてるんだ。▼ 十分すぎるほど苦しんだし、 罪も償っている。▼ お前さんみたいな賢い奴が、 死人のために生きるなんて 馬鹿馬鹿しいぜ。▼ 【エレアノール】 でも・・・ でも、私は忘れられないのです・・・▼ 【オイゲン】 それでも忘れるんだ。 そのためにこいつらがいるんだぜ。▼ その山で親父の代わりに死んでたなら こいつらと出会うことは なかったんだぜ。▼ そう思うと、生きててよかったと 少しは思えてくるんじぁねえか?▼ なあ、お前もそう思うだろ?▼ 【エレアノール】 ・・・そうですね。▼ 【オイゲン】 おう、いい顔だ。▼ なあ○○、この子を頼むぜ。 なあに、化け物と休みなく戦ってりゃ 悩んでる暇はなくなるだろ。▼ 【エレアノール】 オイゲンさん・・・▼ ありがとう、オイゲンさん・・・▼ 【オイゲン】 なあに、俺にも 息子と娘がいたんだよ。▼ 女房と別れたのが20年前だから 今ではもう立派な 大人になってる年齢だが、▼ 小さなガキの頃しか見てねえから お前達がかぶっちまうんだ。▼ だからだろうな、 余計な節介をやいちまう。▼ 今日は疲れただろ、 部屋に帰って休め。 明日から頑張りな。▼ 【エレアノール】 ありがとう、オイゲンさん、 ありがとう、○○・・・▼ 【オイゲン】 俺みたいなオヤジの、 訳の分からね話を聞くより、 お前らと一緒にいた方が あの子も少しは気が晴れるだろ。▼ 頼んだぜ、○○。 お前さんはあの子と 仲がいいみたいだからな。▼ |
・INDEX |