持續了千年歲月的和平時代已成昨日雲煙,這是被後代歷史學家稱做「黃昏時代」的揭幕期‧‧‧



【エレアノール】
○○、少し用事があるので
オイゲンさんの所に
行ってまいります。


【オイゲン】
本当にいいかい?

【エレアノール】
いつもお手数をかけます・・・

【オイゲン】
いやいや、俺は全然手間じゃねえよ。
だが、外の状況がこうなっちゃあ
この金も無事につくか・・・

【エレアノール】
ええ。でも、たとえ1ガルトでも
飢えに苦しむ人々に届けば・・・

【オイゲン】
まあ確かに、何もしないよりは
全然マシだろうが・・・

まったく、お前さんのような
賞金首は初めてだぜ。

だがよ、お前さんが
何をしでかしたのかは知らねえが、
もうちょっと自分のこと考えても
バチはあたらねえと思うがな。

お前さん見てるとは、
どこか痛々しいんだよ。

ん、お前・・・

【エレアノール】
○○・・・

【オイゲン】
すまねえ、取り込み中だ。
またにして・・・

【エレアノール】
いえ・・・
○○・・・話があります。
こちらに来て私の話を聞いて下さい。

いつか話そうと思っていました。
オイゲンさんも聞いて下さい・・・

【エレアノール】
私は、ラコース王国南西部の
ミバル地方を治める領主の家に
生まれました。

治める領地は狭いものの、
領内に豊かな鉱山を有することから
近年は国王に匹敵する財力を
持つまでに至った地方領主。

父はその財力を背景に、
王国の内務大臣の地位に
就いていました。

【オイゲン】
内務大臣ってことは、
国王の次か、その次くらいに
偉いわけだな・・・

【エレアノール】
15歳の時、父は私を国王の
親衛騎士団に入れました。

ラコースの上級貴族の子弟は
成人するまで、王直属の
親衛騎士団に在籍するのが
慣習となっていたためです。

有力諸侯の子弟のみで
編成された最低の騎士団・・・

騎士団とは名ばかりで、
その大半が馬も剣も槍も扱えず、
ただ毎日酒を飲み騒ぐだけ・・・

その騎士団に入団して2年目に、
王国の北部で大規模な農民の反乱が
起こりました。

若い貴族達は、自分達の騎士団を
鎮圧軍に加えるよう
国王に頼みました。

宮廷の娯楽に飽きた彼等にとって
農民軍鎮圧も彼等の退屈を紛らわせる
娯楽でしかなかったのです。

彼等は、狩りを楽しむかのように
無抵抗な農民達を弓で射殺し、
無関係な村を焼き払い進軍しました。

飢えと寒さで、もう彼等には
抵抗する力などなかったのに・・・

鎮圧軍が農民軍を包囲し、
そのせん滅も間近に迫った時、
私は、農民達に密かに使いを出し
彼等の脱出の手助けをしました。

内政を司る大臣の娘として、
農民達の困窮をあまりにも
知らなさすぎた責任、

貴族という身分に属する人間としての
最低限の償いのつもりでした。

王都に戻った私は誓いを立てました。
もう2度とあんな悲劇は
おこさせないと・・・

しかし、その誓いの言葉も虚しいほど
私は余りにも無力。

また、貴族達は、民を支配し
搾取することを当然と考え、

自分達には生まれつきその資格が
あると、自分達が特別な人間、
選ばれた人間であると信じて疑わない。

彼等にとっては、
飢えに苦しむ数万の農民達より

毎夜催される華美を極めた
舞踏会の方が重要であるという、
恥ずべき事実・・・

悩んだ末、私は、民の暮らしが
少しでも楽になるよう、

父や兄の執務室に忍び込み、
政治書類に細工することを
決意しました。

不作に悩む地方の税を軽減させ、
建設予定の離宮の規模を縮小し・・・
もちろん、根本的な解決には
程遠いことは分かっていました。

ただ、私に出来ることは
それくらいしかなかった・・・

【オイゲン】
い、いや、
それだけでも十分だと思うぜ。

お前らしいというか、
なんというか・・・

で、それが見つかっちまったのか?

【エレアノール】
いえ・・・
私が追われる身となった理由・・・

それは、私が助けた農民軍の
指導者の1人が、金のために
密告したのが原因でした・・・

【オイゲン】
え!?

【エレアノール】
私は追われる身となりました。

父や兄までもが、身内の罪を
政敵に利用されるのを恐れ、
誰よりも率先して私の命を狙う・・・

私は孤独と絶望と戦いながら、
あてもなく逃げ続けました・・・

【オイゲン】
やるせねえな、助けた相手に
裏切られるなんて・・・

【エレアノール】
半月後、私はある小さな山に、
追いつめられていました。

その山は、
父と兄の率いる5百人の軍勢と、
賞金に釣られた数百人の
男達に包囲されていました。

そして、兵力の集中していない
地点を捜しながら、
山中を逃げ回っていた時、
偶然、父に・・・

【オイゲン】
・・・・・・

【エレアノール】
父は数十人の護衛と共にいました。

娘を案じる親の姿はそこにはなく、
ただ蔑んだ慈悲の笑みを見せて、
兵に私を殺すよう命令を下しました。

私は・・・

今でも忘れることが出来ない・・・

手を滴り落ちる血の生ぬるさ、
息絶える寸前の苦痛にゆがむ顔と、
今にも飛び出しそうなほど
見開かれた両眼、

そしてその奥に、
私への怒りと憎しみと哀願が・・・

私の目の前には
父の骸が横たわっていました・・・

【オイゲン】
そこで、この町に
逃げてきたって訳か・・・

【エレアノール】
はい・・・

【オイゲン】
でも、酷い言い方かもしれんが、
悩み続けるのもどうかと思うぜ。

たとえ、自分の手で
実の父を殺したにせよ、な・・・

大勢の人を助けよとした
お前には何の罪もねえ。

お前さんには同情するが、
お前の親父さんには
これっぼっちも同情しねえよ。

それに、そんなことがあったら
クサっちまうのが普通なのに、
健気にもまだ人助けをしてる。

殺さなければ殺されていたんだろ?

もちろん、死んだのが
お前さんの方だったのなら
悩まなくて済んだのかもしれねえが、
今、お前は生きてるんだ。

十分すぎるほど苦しんだし、
罪も償っている。

お前さんみたいな賢い奴が、
死人のために生きるなんて
馬鹿馬鹿しいぜ。

【エレアノール】
でも・・・
でも、私は忘れられないのです・・・

【オイゲン】
それでも忘れるんだ。
そのためにこいつらがいるんだぜ。

その山で親父の代わりに死んでたなら
こいつらと出会うことは
なかったんだぜ。

そう思うと、生きててよかったと
少しは思えてくるんじぁねえか?

なあ、お前もそう思うだろ?

【エレアノール】
・・・そうですね。

【オイゲン】
おう、いい顔だ。

なあ○○、この子を頼むぜ。
なあに、化け物と休みなく戦ってりゃ
悩んでる暇はなくなるだろ。

【エレアノール】
オイゲンさん・・・

ありがとう、オイゲンさん・・・

【オイゲン】
なあに、俺にも
息子と娘がいたんだよ。

女房と別れたのが20年前だから
今ではもう立派な
大人になってる年齢だが、

小さなガキの頃しか見てねえから
お前達がかぶっちまうんだ。

だからだろうな、
余計な節介をやいちまう。

今日は疲れただろ、
部屋に帰って休め。
明日から頑張りな。

【エレアノール】
ありがとう、オイゲンさん、
ありがとう、○○・・・

【オイゲン】
俺みたいなオヤジの、
訳の分からね話を聞くより、

お前らと一緒にいた方が
あの子も少しは気が晴れるだろ。

頼んだぜ、○○。
お前さんはあの子と
仲がいいみたいだからな。


   ・INDEX